iPS細胞を活用し化学物質の安全評価…動物実験の代替へ期待

Emotional, Burning, Unlimited Tuned Laboratory

厚生労働省は来年度から、iPS細胞(人工多能性幹細胞)で作った人の神経などの細胞や、ミニ臓器「オルガノイド」を使い、化学物質が人体にとって有害かどうかを調べる新手法の開発に乗り出す。人に近い条件で確認できる利点を生かした手法を国際標準とするのが狙い。日本発の再生医療技術の有用性を世界に広くアピールし、ミニ臓器量産など新産業の育成にもつなげたい考えだ。

iPS細胞やオルガノイドのような再生医療技術は、人体の臓器や組織に近い環境を作り出せる。京都大や国立成育医療研究センター(東京)などを中心に、これらを作り、候補薬の効果を確かめる研究が盛んだ。厚労省は、日本が強みを持つこの技術を使い、工業製品の製造現場などで用いられる化学物質の安全性を確認する手法を新たに開発することにした。専門家による研究班を来年度に設置し、3年程度かけて有効性を検証する。

具体的には、人のiPS細胞から変化させた神経細胞やミリサイズのミニチュア肺を作製し、神経への影響の有無や化学物質を吸い込んだ時の変化を評価する。人に由来した細胞やミニ臓器を使うため、マウスなどを使った従来の実験よりも、人体への影響を詳細に確かめやすいとみられる。